遺産分割の対象となる財産の範囲

遺産分割とは、被相続人の遺産について、個々の相続財産の権利者を確定させるための手続きのことです。したがって、遺産分割手続きでは、分割対象となる財産の範囲を確定することが重要となります。

では、そのような財産にはどのようなものがあるでしょうか。このページでは、遺産分割の対象となるかどうかについて、注意しておくべき財産について概説します。

遺産分割の対象になる財産

不動産

被相続人が所有していた土地や建物といった不動産は、相続開始と同時に共同相続人の共有状態となります。したがって、その最終的な権利帰属を確定させるために、不動産は遺産分割の対象財産となります。但し、遺産分割までの間に相続人全員でこれを第三者に売却した場合、その代金を遺産分割の対象とする合意のない限り、その代金債権は遺産分割の対象からは除外されます。

賃料収入はどうなる?

被相続人が賃貸マンションや貸ビル・貸地などの収益不動産を所有していた場合、被相続人の亡くなった後も当該不動産からの賃料収入が発生します。このような相続開始後の地代・家賃収入については、判例上、遺産分割の対象とはならないと考えられています。これらは相続開始によって共有状態となった不動産の共有者が固有に取得するものであり、そもそも遺産ではないという理由です。

借地権

被相続人が借地上に建物を所有していたような場合、建物のみならず、当該敷地に対する借地権も相続財産として取り扱われ、遺産分割の対象となります。

  1. 借地権の遺産分割

動産

被相続人が所有していた自動車や宝石、骨董品などの動産も、不動産と同様、相続開始と同時に共同相続人の共有となります。

預貯金

預貯金は、従来、相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割される可分債権であり、原則として、遺産分割の対象とはならないと解釈されてきました。しかし、最高裁平成28年12月19日大法廷決定により判例が変更され、現在は、当然には分割されず、相続人の同意の有無にかかわらず遺産分割の対象になるものと解されています。

  1. 相続財産となる預貯金の取り扱いに関する判例変更。共同相続された預貯金は遺産分割の対象になります。

現金

現金については、当然分割されるものではないため、遺産分割の対象となると考えられています。したがって、被相続人が金庫に残した現金を管理している他の相続人に対し、遺産分割前に自己の相続分に応じた一部を引き渡すよう要求することは通常困難です。

株式・出資持分

被相続人が株式の取引をしたり、株式会社を経営していた場合などに保有していた株式については、共同相続人による準共有状態にあるものとして、遺産分割の対象となります。株式には、会社から配当を受け取る権利を含みますが、他方で株主総会に出席して議決権を行使するなどの共益権を含むものであり、単純な金銭債権のように当然に分割されるとはいえないためです。有限会社(正式には特例有限会社といいます)の出資持分についても同様です。

  1. 株式の相続と遺産分割

原則として遺産分割の対象にならない財産

相続債務

遺産分割は積極財産の最終的な帰属者を確定する手続きであり、相続債権者に無断で負担割合を調整することもできないため、被相続人名義の借入金や保証債務などの相続債務は遺産分割の対象とはなりません。

生命保険金など相続財産性が否定されるもの

生命保険金は、受取人固有の権利であり、そもそも相続財産には当たらないのが通常です。遺産分割は相続財産の最終的な取得者を決める手続きですので、こうした相続財産に含まれない権利については、基本的に遺産分割の対象とはなりません。

相続人の合意による組み入れ

これまでは、各財産の性質に着目して、遺産分割の対象となるかどうかの法的な枠組みについて説明してきました。しかし、各財産の性質上遺産分割の対象とならない財産であっても、遺産分割の当事者である共同相続人が合意する限り、これを遺産分割の対象とすることができる財産もあります。例えば、

  1. 貸付金
  2. 消費者金融取引の過払金などの不当利得債権
  3. 交通事故賠償金などの不法行為債権
  4. 相続開始後の賃料
  5. 相続債務

などについては、当然には遺産分割の対象となるものではありませんが、相続人間でこれらを含めて遺産分割を行うことを合意し、分割対象となる財産の範囲を拡大することによって、各事案の実情に応じた柔軟な解決の道を探ることができます。

もっとも、遺産分割の対象に含める旨の共同相続人の合意によっても、遺産分割審判では分割の対象として取り扱ってもらえないものもあるので注意しましょう。

遺産分割の対象財産かどうかで迷ったら

いかがでしたでしょうか。遺産分割の交渉や調停では、どの範囲の財産を分割の対象にするかでモメることは少なくありません。そして、これが遺産分割の結果に大きく影響することも十分にあり得ます。

ある財産が遺産分割の対象となるかについては、法律的な知識・判断が必要となることが少なくありません。遺産分割の対象財産になるかどうかで迷ったら、まずは弁護士にご相談ください。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

法律相談のご予約はこちら

  • お問い合わせフォームへ

法律相談のご予約はこちら

  • お問い合わせフォームへ