亡くなる3年前の不動産贈与 | 遺留分減殺請求と特別受益にあたる生前贈与

被相続人の父(A)は、亡くなる3年前に自宅の土地建物を兄(B)に贈与し、残りの遺産についても全て兄に相続させる旨の遺言を残して亡くなりました。相続人は私(C)と兄の2人だけです。私は遺留分減殺請求をしたいのですが、3年前に贈与された不動産についてはどのように考えればよいでしょうか。

遺留分と特別受益

遺留分の計算と遺留分減殺対象の2つの問題がある

被相続人Aが兄Bに対しておこなった自宅不動産の贈与が、遺留分減殺請求との関係でどのようになるかというのが今回の相談です。ここでは主に次の2つの問題を検討する必要があります。

  • 遺留分算定について、その贈与が遺留分算定の基礎となるか
  • その贈与が遺留分減殺の対象となるか

以下、順にみていきましょう。

特別受益と遺留分算定の基礎となる財産

具体的遺留分の算定方法

ある特定の相続人に認められる遺留分(具体的遺留分額)は、以下のような算定式によって求めることになります。

具体的遺留分額=遺留分算定の基礎となる財産×遺留分率×法定相続分

今回の相談事例では、相談者C氏の法定相続分は2分の1、法定相続人が子で構成されるため相続人全体の遺留分率は2分の1となります。したがって、C氏には「遺留分算定の基礎となる財産」の4分の1相当額の遺留分が認められることになります。

では、Bさんに贈与された不動産は、この「遺留分算定の基礎となる財産」に含まれるでしょうか。

生前贈与と遺留分に関する民法1030条の規定

被相続人による生前贈与と遺留分算定の基礎となる財産の関係については、民法1030条が以下のような原則を定めています。

  1. 相続開始前1年以内になされた贈与は遺留分算定の基礎に加算する
  2. 相続開始より1年以上前になされた贈与であっても、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与をしたときは、遺留分算定の基礎に算入する

なお、「損害を与えることを知って」とは遺留分を侵害するという認識があるという程度のことをいうものを理解されています。

第千三十条

  • 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

この規定によれば、被相続人A氏の死亡より3年も前に行われたB氏への贈与については、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知っていたといえない限り、「遺留分算定の基礎となる財産」には含まれないということになるようにも見えます。

特別受益となる生前贈与と民法1044条

しかし、被相続人が共同相続人のうちの特定の者に対し生計の資本としての贈与を行った場合、その贈与は特別受益として扱われます。相談例のような自宅不動産の贈与は、生計の資本としての贈与と判断されるケースが多いでしょう。

そして、被相続人による贈与が特別受益にあたる場合、当該贈与はその時期にかかわらず、遺留分算定の基礎となる財産に算入されます。これは、民法1044条が、特別受益について定めた民法903条を遺留分について準用しているためです(なお、寄与分については準用の対象とされていません。)。

したがって、相談例のように、被相続人の亡くなる1年以上前に特別受益となる贈与がなされた場合でも、その贈与は遺留分算定の基礎となる財産に含まれることになります。

B氏への贈与は減殺対象となるか

では次に、相続開始より1年以上前になされた特別受益にあたる贈与が遺留分減殺の対象となるかについて見ていきましょう。

民法1031条の規定

遺留分減殺の対象について民法1031条は次のように定めています。

第千三十一条(遺贈又は贈与の減殺請求)

  • 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

この規定を素直に読むと、前条の規定(民法1030条)の要件を満たさない贈与については、遺留分減殺の対象とならないように読めます。

最高裁判例

しかし、最高裁判所第三小法廷平成10年3月24日判決は、特別受益にあたる贈与については、民法1030条の要件を満たさないものであっても、原則として遺留分減殺の対象となるという判断を示しています。

このように考えないと、「遺留分を侵害されながら、減殺の対象となるべき遺贈や贈与がないために、遺留分権利者が遺留分相当額を確保できない」という事態が生じるが、それは遺留分制度の趣旨を没却することになるというのが主な理由とされています。

もっとも、この判例は、特別受益にあたる贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の事情の変化等を考慮して減殺請求を認めることが特別受益者にとって酷であるというような一定の場合には、例外的に減殺請求が認められない場合もあることを述べています。

B氏への贈与について

以上によれば、相談者Cさんは、原則として、被相続人とB氏の認識にかかわらず、3年前の不動産の贈与を対象とする遺留分減殺請求を行うことができそうです。

まとめ

このように、特別受益にあたる生前贈与がなされている場合には、その時期にかかわらず、当該贈与は遺留分計算の基礎となり、原則として遺留分減殺の対象ともなり得ます。遺留分減殺請求をお考えの方は、ぜひ過去に特別受益がないかどうかのチェックをお忘れなきようご注意下さい。

このほか、遺留分減殺請求についてお困りの点やご不明の点がある方は、遺産分割や遺留分などの遺産相続問題を得意とする弁護士へご相談になることをお勧めします。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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