遺留分減殺請求の相手方・請求先

遺留分減殺請求を行うにあたり、被相続人が複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っており、複数の受遺者や受贈者がいる場合があります。このようなとき、遺留分権利者は、誰を相手方(請求先)として遺留分減殺請求通知を出すべきでしょうか。

今回は、遺留分減殺請求に関する相手方を誰にすべきかについて、いくつかの想定事例をもとに、民法が定める基本ルールを弁護士が解説します。

遺贈と生前贈与がある場合の遺留分減殺請求

想定事例

  1. 死亡の6ヶ月前:A氏に対する株式の生前贈与
  2. 相続開始時:遺言によりB氏に対し不動産を遺贈

遺贈vs贈与

遺贈を減殺してから贈与を減殺する

生前贈与と遺贈が併存する場合の遺留分減殺対象の順序については、遺贈を優先するという民法1033条の規定があります。相続開始時点からみて生前贈与よりも新しく、実効性が高い上に減殺請求の相手方の不利益も少なくなりやすいため、遺留分権利者の保護や法律関係の安定の調和の観点からこのような規定が設けられたと考えられています。

第千三十三条 (贈与と遺贈の減殺の順序)

  • 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。

この規定により、遺贈と贈与が併存する場合の遺留分権利者としては、まず遺贈を先に減殺し、遺留分侵害額が未だ残っている場合に贈与を減殺するということになります。想定事例でいえば、まずB氏への遺贈を減殺し、それでも遺留分の保全に足りない場合にのみA氏に対する減殺請求が可能となります。

なお、この民法1033条は、被相続人の意思によっても変更することのできない強行規定であるとする見解が一般的です。

遺贈が複数ある場合の遺留分減殺請求

想定事例

  1. 相続開始時:A氏に対し3000万円相当の株式を遺贈
  2. 相続開始時:B氏に対し2000万円相当の不動産を遺贈

※A氏及びB氏は共同相続人でない

遺贈vs遺贈

遺贈価額の割合で按分して全受贈者を相手方に(原則)

複数の受遺者が併存する事案での遺留分減殺請求については、民法1034条が以下のような規定を置いています。

第千三十四条 (遺贈の減殺の割合)

  • 遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

したがって、複数の遺贈がある場合の遺留分権利者は、原則として、受遺者全員を相手方にし、遺贈の価額に応じて按分した遺留分減殺請求を行うことになります。想定事例でいえば、遺留分侵害額が1000万円である場合、A氏に対し600万円、B氏に対し200万円の減殺請求が可能となります。

受遺者が共同相続人である場合

なお、複数の遺贈があるがそれが共同相続人に対する者である場合については、遺贈の目的の価額のうち受遺者の遺留分を超える部分のみが、按分計算の基礎となる遺贈の目的の価額となります(最高裁判所平成10年2月26日判決。但し、同判決は純粋な遺贈ではなく、いわゆる「相続させる」遺言の事案。)

遺言者による別段の意思表示があるとき(例外)

民法1034条本文の規定は、通常の遺言者の意思を前提として定められたものであるため、遺言に別段の意思表示がなされている場合には、その意思にしたがうものとされています(同条但書)。

したがって、例えば、遺留分侵害額が1000万円で、遺言にA氏への減殺請求を先行させる旨の意思表示が認められるときは、A氏への遺贈のみを1000万円分減殺すべきこととなります。

贈与が複数ある場合の遺留分減殺請求

想定事例

  1. 死亡6ヶ月前:A氏に対し3000万円相当の株式を生前贈与
  2. 死亡2ヶ月前:B氏に対し2000万円相当の不動産を生前贈与

贈与vs贈与

新しい贈与から古い贈与へ順に減殺する

複数の生前贈与が併存する場合の遺留分減殺の順序については、民法1035条が、「後の贈与」すなわち時間的に最も新しい贈与から古い贈与へと順に減殺するという規定をおいています。古い贈与の方が減殺対象となった場合に生じる影響が大きいことなどが、その根拠であると考えられます。

第千三十五条 (贈与の減殺の順序)

  • 贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする。

この規定により、複数の贈与が併存する場合の遺留分権利者としては、まず相続開始時に最も近い贈与を減殺し、遺留分侵害額が未だ残っている場合には順に古い贈与を減殺するということになります。想定事例でいえば、まずB氏への贈与を減殺し、それでも遺留分の保全に足りない場合にのみA氏に対する減殺請求が可能となります。

まとめ

以上、遺留分減殺請求の順序に関する民法の基本ルールをまとめました。

遺留分減殺請求においては、誤った相手方に減殺通知を送付しても減殺の効力は発生しません。正しい相手方を誤解したまま遺留分減殺請求を行わずに権利行使期間を過ぎてしまうと、遺留分権利者が遺留分を回復できないという事態も起こり得ます。このような事態を避けるためにも、遺留分減殺請求を行う方は、遺産相続を得意とする弁護士に相談し、正しい遺留分減殺請求を行うことをお勧めします。

また、遺留分減殺請求をされた方としても、遺留分権利者の主張が本当に民法のルールに適合したものであるかどうか、弁護士に一度相談してみるとよいでしょう。

本記事が、遺留分減殺の問題でお困りの方の参考になれば幸いです。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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