遺留分の計算と持戻し免除の意思表示

私の母(A)は昨年亡くなりました。父は既に亡くなっており、母の相続人は私(X)と兄(Y)の2名です。母の遺産は300万円ほどの株式のみで借金はありません。母は亡くなる3年前、所有していた自宅のマンション(評価額2700万円)を兄に贈与していたようです。また、母は遺言書を作成しており、全財産を兄に相続させること、自宅の生前贈与については持戻しを免除することが記載されていました。私は、遺留分減殺請求をしたいのですが、遺留分の計算はどのようにすればよいでしょうか。

持戻し免除の意思表示と遺留分計算

遺留分額計算の基本

基本計算式

特定の相続人に認められる遺留分額は、次の計算式によって求めることができます。

個別的遺留分の額=遺留分算定の基礎となる財産額×遺留分率×法定相続分の割合

今回は、特別受益の持ち戻し免除の意思表示がある場合に、上記のうち「遺留分算定の基礎となる財産額」の要素をどのように考えるべきかがテーマです。

遺留分算定の基礎となる財産

遺留分算定の基礎となる財産額は、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に、贈与財産の価額を加え、最後に相続債務を控除して算出します。

そして、この相続開始時に有していた財産額に加えられる生前贈与は、相続開始前1年以内の贈与に限定されるのが原則です。しかし、特別受益にあたる生前贈与は例外的に1年以上前のものであっても遺留分算定の基礎財産に加えられます。

遺留分算定の基礎財産と持ち戻し免除の意思表示

特別受益による相続分の修正

遺産分割において生前贈与等の特別受益が存在する場合、原則として、各相続人の相続分の算定において、特別受益相当額を考慮した修正計算(持ち戻し計算)が行われます

他方で、特別受益が存在しても被相続人から持戻し免除の意思表示を受けた場合は、相続分修正の必要が無くなり、遺産分割をする上では生前贈与がなかったものと同様に扱われます。

持戻し免除の意思表示は遺留分算定の基礎財産額に影響を与えるか

では、このような持ち戻し免除の意思表示は、遺留分計算の場面ではどのように機能するでしょうか。

被相続人の意思を重視するという立場に立てば、持戻し免除の意思表示がされている場合は、特別受益にあたる贈与は遺留分算定の基礎財産額に加えられないとも思われます。

持戻し免除の意思表示は遺留分算定の基礎財産額の算定に影響を与えない

しかし、結論からいうと、特別受益にあたる生前贈与額は持戻し免除の意思表示があったとしても遺留分算定の基礎財産に加えられます

この点については、最高裁第1小法廷平成24年1月26日判決は、被相続人が特別受益にあたる贈与につき、当該贈与にかかる財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示をしていても、贈与価額は遺留分の算定の基礎となる財産額に算定されるものと解されると判示しています。

これは、遺留分制度の趣旨が、被相続人の財産処分の自由を制限することにより相続人に被相続人の財産の一定割合の取得を保障する点にあるところ、持戻し免除の意思表示によって生前贈与が遺留分算定の基礎財産に含まれないとすると、相続人が確保できる財産割合が少なくなり遺留分制度の趣旨を害してしまうからです。

相談例のケース

この判例にしたがえば、Aさんが遺言書にYさんへの生前贈与について持戻しを免除すると記載したとしても、特別受益に相当する贈与は遺留分算定の基礎に含まれることになります。

したがって、遺留分算定の基礎となる財産の額は、遺産である株式300万円に生前贈与額2700万円を加えた合計3000万円となり、これに本件の場合の遺留分率1/2、Xさんの法定相続分合の1/2を乗じた750万円がXさんの遺留分額になるでしょう。

(300万+2700万)×1/2×1/2=750万円

まとめ

以上、生前贈与につき持戻免除の意思表示がある場合における遺留分算定の基礎財産の算入方法について解説しました。

弁護士法人ポート法律事務所では、遺留分の請求をしようとお考えの方、遺留分減殺請求を受けた方いずれのご相談ご依頼であってもお受けしております。本記事をお読みになり、遺留分に関する疑問点やご相談がおありの方は、お気軽に当法人の無料法律相談をご利用ください。

(弁護士 吉口直希)

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