単純承認の基本

単純承認は、相続放棄や限定承認と並ぶ相続方式のひとつです。単純承認は、最も基本的であり、最もよく選択されている相続方式ということができるでしょう。このページでは、単純承認の基本的事項について弁護士が解説します。

単純承認とは

単純承認とは、相続人が被相続人の権利義務を承継することを無限定に承認することをいいます。

相続放棄や限定承認との違いは?

単純承認と並ぶ相続の方式としては、相続放棄限定承認があります。これらの制度との違いとしては、相続放棄や限定承認が、被相続人の権利義務の一部または全部の承継を否定し得る制度であるのに対し、単純承認は、被相続人の権利義務を全面的に引き継ぐという点が重要です。

単純承認の方法

単純承認は、限定承認や相続放棄と異なり、その方式については民法上何ら規定がありません。したがって、相続人が単純承認をする旨の意思表示を表示すれば、これにより、単純承認の効果は発生するとされています。

ただし、単純承認の意思表示は一度すると、これを自由に撤回することはできないため、借金などの債務の存否を十分調査した上、慎重に行う必要があります。

第九百十九条1項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)

  • 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

法定単純承認について

法定単純承認とは、相続人による単純承認の意思表示が無い場合であっても、一定の事由が生じた場合、単純承認の意思表示が為されたものとみなすことをいいます。

第九百二十一条(法定単純承認)
  • 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
  • 一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
  • 二  相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
  • 三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

前述のとおり、単純承認の撤回が原則不可能とされていることから、「相続放棄をするつもりであったのに、法定単純承認に該当する行為をしてしまったがため、相続放棄が不可能となる」などというケースが多くありますので、法定単純承認事由には十分な注意が必要です。

法定単純承認該当性に関する事例の紹介

以下では、法定単純承認に当たるかどうかが問題となる具体的事案について検討してみます。法定単純承認となる一定の事由をまとめると、次のとおりとなります。

  1. 被相続人の財産の一部又は全部の処分(ただし、保存行為及び短期賃貸借契約の締結は除く)
  2. 3か月の熟慮期間内に限定承認ないし相続放棄をしなかったとき
  3. 限定承認又は相続放棄後の、相続財産の隠匿・私的消費・悪意による相続財産の目録への不記載(ただし、その相続人が相続放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後の行為を除く。)

被相続人の預貯金から葬式費用を支出した場合

被相続人の死亡後に、被相続人名義の預貯金を解約し、解約金から葬式費用を支出した場合、当該行為は「相続人の財産の一部又は全部を処分したとき」(以下、「財産処分行為」といいます。)に該当するのかが問題となります。

この点、一般的には、支出した葬式費用が社会通念上不当に高額でない限り、財産処分行為には該当しないとされています。   

相続財産である債権を行使した場合          

相続財産である債権につき、相続人が債務者に対して支払を請求した場合、当該行為が財産処分行為に該当するかが問題となります。

この点、一般的には、債務者に支払を請求する行為は、当該債権の消滅時効を中断させる効果を有することから保存行為に該当し、財産処分行為には該当しないものと解されています。一方、債務者から債権を取り立てた上、これを相続財産として保管することなく、収受・領得した場合には、もはや保存行為の域を逸脱していますので、財産処分行為に該当するものと解されています。

被相続人の死亡を知らずに財産処分行為をした場合

相続人が被相続人の死亡を知らずに相続財産を処分した場合、当該行為をもって単純承認の意思表示を擬制することができるどうか問題となります。

この点、仮に相続人が相続財産処分行為をした場合であっても、同人がいまだ相続開始の事実を知らなかったときは、同人に単純承認の意思があったものと擬制するのは適当でないことから、単純承認の意思表示は擬制されません。

生命保険金の受取人となっていた相続人がこれを受領し、処分した場合

被相続人が締結していた生命保険契約につき、相続人が受取人として指定されていた場合、当該相続人が被相続人の死亡後、これを受領し、処分した行為は財産処分行為となるのかが問題となります。

この点、相続人が受取人として指定されている場合には、当該保険金は相続財産ではなく、相続人固有の財産となるため、財産処分行為には該当しません。

まとめ

以上、単純承認の基本的事項について解説しました。単純承認の制度に関しては、特に法定単純承認の仕組みを理解しておくことが重要です。この点の理解不足は、深刻なトラブルの原因となりがちです。

弁護士法人ポートでは、単純承認に関するご相談・ご依頼をお受けしております。単純承認についてお困りの際には、ぜひ、当事務所の遺産相続無料法律相談をご利用下さい。

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