遺産分割の方法

このページでは、遺産を構成する個々の財産を各相続人にどのように取得させるかという「遺産分割の分割の方法」について解説します。遺産分割の方法については、遺産分割をどのような手続きによって進めていくかという問題と、個々の財産をどのように各共同相続人に帰属させるかという問題があります。以下、順番にみていきましょう。

遺産分割の方法【手続き面】

遺産分割を進める方法としては、次の4種類があります。

  1. 遺産分割の方法が指定された遺言に基づく方法
  2. 遺産分割協議による方法
  3. 遺産分割調停による方法
  4. 遺産分割審判による方法

1 遺産分割の方法を指定した遺言書がある場合

遺産分割の方法が指定された遺言書とは、例えば、「自宅の土地建物を、長男太郎に相続させる」というような内容の遺言をいいます。

判例では、被相続人の残した遺言書が、特定の財産を特定の相続人に相続させる趣旨であると認められる場合には、特段の事情がない限り、遺産分割を介さずともその財産が当該相続人に承継されるものとされています。

そのため、このような趣旨の遺言書がある場合には、当該財産に関しては協議や調停などによる遺産分割は不要ということになります。これが上記a.の方法です。

2 遺産分割の方法を指定した遺言書がない場合

民法は、遺産の分割について共同相続人との間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は家庭裁判所に遺産の分割を請求することができると規定しています。

民法907条2項

遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。

そのため、相続人はまず共同相続人による話し合いの方法を検討します。これが上記b.の方法です。

さらに、話し合いによる解決が難しい場合は、家庭裁判所に舞台を移し、遺産分割調停・遺産分割審判の方法を検討する流れとなります。これが上記c.d.の方法です。

遺産分割の方法[財産の帰属]

遺産分割によって個別の財産をどのように帰属させるかという点では、次のような方法があります。

  1. 現物分割
  2. 代償分割
  3. 換価分割
  4. 共有分割

現物分割

現物分割は、個々の財産の形状や性質を変更することなく、各相続人に単独取得させる手段です。

例えば、自宅は妻に、田舎の土地は長男に、預貯金は次男にそれぞれ取得させる旨の遺産分割がこれに当たります。また、一筆の土地のを数筆に文筆し、それぞれを単独取得する方法も現物分割の一種です。

代償分割

代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させた上、他の相続人に対する債務を負担させることにより全体の配分バランスの調和を図る分割手段です。代償分割の方法は、遺産分割協議や調停では採用に制限はありませんが、審判による方法の場合には、法律上、「特別の事情」がある場合に限って認められるとされています。

例えば、遺産が居住用不動産のみで、現にそこに相続人である妻が生活しているため、妻の生活関係の安定を考慮しなければならない場合に、他の相続人である子供には妻が相応の代償金を支払うといった内容の代償分割が考えられます。

換価分割

換価分割とは、遺産を第三者に売却し、換価した後、その売却代金を共同相続人間で配分する分割手段です。

例えば、空き家となった被相続人の自宅不動産を地元の人に売却し、その代金を相続人全員で配分するといった内容の換価分割が考えられます。

共有分割

共有分割とは、遺産の一部または全部を、具体的相続分による物権法上の共有取得とする分割手段です。

例えば、ある不動産の持分につき、妻は5分の3、長男は5分の1、次男は5分の1の各持分割合で共有取得するといった内容の共有分割が考えられます。したがって、ある財産を共有分割とした場合には、遺産分割後においてもなお共有関係が継続することになります(但し、その後の共有関係の解消には、遺産分割手続きではなく、共有物分割請求をすることになります。)。

遺産分割の方法の現実

これまで、手続き面と財産の最終的な帰属という面から、遺産分割の方法をみてきましたが、実際の遺産分割では、必ずしも、これらのいずれか一つの方法のみが採られるというわけではありません。

例えば、不動産については共有分割とし、その他の遺産については現物分割などというように、いくつかの方法を組み合わせることが可能です。また、一部を先行して遺産分割協議によって解決するが、どうしても結論のでない遺産についてのみ、遺産分割調停に持ち込むということもあります。

このように、実際の遺産分割の現場では、それぞれの遺産分割方法のメリットやデメリット、長所短所を考慮し、事案の実情に合わせた方法を選択していくことが重要となります。

宮嶋太郎
代表パートナ弁護士
東京大学法学部在学中に司法試験合格。最高裁判所司法研修所にて司法修習(第58期)後、2005年弁護士登録。勤務弁護士を経験後、独立して弁護士法人ポートの前身となる法律事務所を設立。遺産相続・事業承継や企業間紛争の分野で数多くの事件を解決。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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