遺産分割前の相続株式に関する権利行使

父(A)は叔父(B)と一緒に株式会社を経営していました。父と叔父に加え、私(C)と弟(D)も取締役となっていますが、所有株式の割合は父が60%・叔父が40%でした。先日、父が亡くなり、私(C)・弟(D)・妹(E)が相続人となったのですが、遺産分割はまだ成立していません。この度、株主総会に出席して議決権を行使する予定ですが、どのようにすればよいでしょうか。

遺産分割前の相続株式

問題の所在

被相続人が亡くなったことから株式を相続したが、株式を含めた遺産分割がなかなかされない、しかし、会社で重要事項を決める必要があるという場合があります。

例えば、今回のケースで、取締役からC及びDを解任する議案が出たとしましょう。この議案につき、CDEが個別に20%ずつの議決権行使ができるのであれば、40%を持つBとEが協力することにより、C及びDを排除することができます。

逆に、CDEが60%の株式について共同して権利行使をしなくてはならないとすれば、CDの意見が優先され、CDの解任案は阻止されるようにも思えます。

では、このような遺産分割前の相続株式がある場合、相続人による権利行使はどのように規律されるでしょうか。

遺産分割前の株式は相続人による準共有となる

まずは、遺産分割未了の相続株式が各相続人にどのように帰属するかを見ておきましょう。

この点、遺産分割未了であっても、預貯金のような単純な金銭債権は、相続の開始によって当然に分割されます。3000万円の普通預金があれば、3名の相続人に各1000万円が帰属するわけです。

しかし、株式はそのような金銭債権とは異なり、相続開始によって当然に分割されるものではなく、遺産分割がなされるまでは、相続人による共有になるとされています(もっとも、株式はモノの所有権ではないので「準共有」と呼ばれ、原則として民法の共有に関する規定が準用されます。)。

したがって、今回の相談者のケースでも、遺産分割前の状態としては、会社の株式はCDEに各20%分ずつ帰属するのではなく、CDEが60%分を(準)共有しているということになります。

共有株式の権利行使に関する会社法の規定

共有株式の権利行使については会社法に規定があり、相続にともなう共有株式についてもこの規定が適用されます。

会社法106条 (共有者による権利行使)

  • 株式が二以上の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない。

したがって、相続により共有となった株式の相続人が当該株式について権利行使をするためには、他の相続人との間で権利行使者を1名定めた上で、これを会社に通知する必要があります。この通知をしない限り、原則として、相続人は相続した非上場株式に関する権利行使を単独ですることはできません。

相続人による権利行使者の指定と権利行使内容の決定

では、共有株式に関する権利行使者の指定や、その権利行使内容の決定はどのように行えばよいのでしょうか。

権利行使者の指定

権利行使者の指定とは、株式の共有者のうち誰が会社に対し権利行使を行うかという問題です。

この点、有限会社持分の事例ではありますが、判例(最判平成9年1月28日)では、相続人間で権利行使者を定めるに当たっては、全員の一致までは必要ではなく、持分の価格の過半数をもって多数決でこれを決することができるという判断が示されています。

権利行使内容の決定

権利行使内容の決定とは、共有株式の権利をどのように行使するか、例えば、株主総会で議案に賛成するか反対するか、共有株式の株主として株主総会決議取消訴訟を提起するか否かなどという問題です。

この点については、次の規定をみておきましょう。

第二百五十一条 (共有物の変更)

  • 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

第二百五十二条(共有物の管理)

  • 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

このように、民法の共有に関する規定は、共有物の管理行為については持分価格に応じた過半数の一致、共有物の変更(処分を含むとされています)に該当する行為は共有者の全員一致によるものとされています。

そして、最判平成27年2月19日は、議決権行使内容の決定に関し、次のように述べています。

共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられるものと解するのが相当である。

これによれば、少なくとも議決権の行使に関しては、原則として、共有者の持分の過半数で行使内容を決定すればよいということになります。

権利行使者の指定通知を欠く場合の会社の同意

以上に対し、相続人による権利行使者の指定・通知を欠いたにもかかわらず、遺産である株式のうち過半数未満の割合の株式を有していたにすぎない相続人の一人に対し、会社が議決権を行使させるとどうなるでしょうか。

この点は、会社法106条但書きの解釈を巡って争いがありましたが、最判平成27年2月19日は、指定や通知を欠いた共有株主による権利行使は、それが民法の共有に関する規定に従ったものでないときは、議決権行使に関する会社の同意があっても適法とならないという判断をしました。

したがって、株式会社が相続人に不用意に権利行使をさせてしまうと、株主総会決議が取り消されてしまう可能性がありますので、会社側は注意が必要です。

議決権の不統一行使という方法

なお、議決権の行使内容について、株式の共有者間で見解が一致しない場合、権利行使者において議決権の不統一行使を行うという方法が考えられます。相談例のケースで言えば、ある議案について、40%分を賛成、20%分を反対という具合です。

もっとも、共有株式の権利行使者による議決権の不統一行使については、これを会社が拒否できるという見解もあるため、一定のリスクをともないます。

また、取締役会設置会社においては、不統一行使を会社に対し事前に通知する必要があるとされています。

まとめ

以上、遺産分割未了の相続株式に関する権利行使について解説しました。

遺言により株式の相続人が指定されていないようなケースでは、遺産分割前に事業承継の方針が相続人間で対立し、共有株式の議決権行使についてトラブルが生じる例は少なくありません。このようなトラブルに巻き込まれた相続人の方はもちろん、会社側も弁護士に相談するなどして慎重な対応をする必要があるでしょう。

また、そもそもこうしたトラブルの発生を回避し、スムーズな事業承継を行うためには、やはり被相続人による生前の相続対策が重要であるということができるでしょう。この点についても、出来るだけ早期に弁護士に相談し、対策を検討しておくことが肝要です。

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