遺言の効力に関する基礎知識
遺言書を作成した場合、その遺言はいつから、どのような法的効力を持つのでしょうか。このページでは、遺言の効力に関する基本的事項について弁護士が解説します。なお、以下では、有効な遺言についてどのよう効力が生ずるかについて解説し、遺言そのものが無効となる場合については別ページで解説します。
遺言の効力発生時期
遺言は、原則として遺言者の死亡時から効力が発生します。ただし、例外として、遺言に停止条件が付されていた場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、条件が成就した時から遺言の効力が発生します。
第九百八十五条(遺言の効力の発生時期)
- 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
- 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
そのため、遺言によって財産を取得することが予想される者であっても、遺言者の生前においては何ら具体的な法的権利を取得するものではなく、また、その期待権すら持たないとされています。
受遺者が先に死亡していた場合の遺贈の効力
遺言の効力が発生するよりも前に受遺者が死亡していたという場合、その遺言に書かれた遺贈の効力はどのようになるでしょうか。このような場合については、民法が次のような規定をおいています。
第九百九十四条(受遺者の死亡による遺贈の失効)
- 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
- 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
このように、遺言の効力が発生する前に受遺者が先に死亡してしまった場合、遺贈の効力は発生しないものとされています。受遺者の相続人が新たな受遺者となるわけではありません。要するに、受遺者となり得るのは特別の記載がない限り、一代限りということです。遺言者としては、受遺者が死亡してしまった場合には遺言の内容を再検討しておく必要があるでしょう。
なお、この場合、効力の生じない遺贈の対象物については、相続人が相続するということになります。
第九百九十五条(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
- 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
遺言による権利移転の効力
遺言者の死亡により遺言の効力が発生した場合、その遺言において特定の受遺者に遺贈された財産については、遺言の効力発生と同時に受遺者に移転するものとされています。また、特定の相続財産を相続人の一人に「相続させる」という内容の遺言がなされた場合にも、遺言者の死亡と同時に当該相続人への権利移転の効力が発生すると考えられています。
不動産を目的とする遺贈と対抗要件
遺贈の目的となる財産が不動産である場合には、受遺者がその取得を第三者に対抗するためには、対抗要件を備える必要があるとされています。この点は、遺産分割方法の指定であると解釈されている「相続させる」旨の遺言による取得の場合と異なることに注意が必要です。
遺言と異なる遺産分割はできる?
遺言と異なる内容の遺産分割をすることは可能でしょうか。被相続人の死亡後、従前誰もその存在を知らなかった遺言書がみつかり、その中をみると、相続人の希望する遺産分割の分配案とは異なる内容の遺言が記載されていたというようなケースで問題となります。
この点、相続人全員の合意(遺贈がある場合は受遺者の合意も含む)があれば、遺言で示された内容と異なる遺産分割をすることも認められています。これは、遺言の利害関係人全員が遺言の内容と異なる遺産分割を希望するのであれば、これを認めることが利害関係人の利益に繋がるからです。
ただし、次のような場合には、たとえ相続人全員の合意があっても遺言の内容と異なる遺産分割は認められません。
- 遺言で遺産分割協議の禁止がなされている場合
- 遺言執行者が選任されており、その遺言執行者の同意が得られない場合
遺言の効力の基礎知識:まとめ
遺言の効力の基本的事項について説明してきました。弁護士法人ポートでは、遺言の効力に関する法律問題・トラブルついても、ご相談・ご依頼をお受けしております。この記事をご覧いただき、遺言の効力についてご不明な点がある場合には、ぜひ当事務所の無料法律相談をご利用ください。