再婚相手の連れ子に相続権はない?連れ子に遺産を取得させる方法

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私(A)は、前妻(B)との離婚後、現在の妻(D)再婚しました。前妻との間には実子(C)がいるのですが、現在の妻との間には実子がなく、現在の妻の連れ子(E)がいるのみです。私の財産はEに相続させたいのですが、Eに相続権はありますか。

連れ子の相続権

法定相続人は「配偶者+血族相続人」

民法は、被相続人が死亡した場合に相続権が認められる者の範囲を、あらかじめ定めています。これを法定相続人といいます。

法定相続人は、配偶者相続人と血族相続人によって構成されます。このうち、「血族相続人」とは、要するに被相続人と血縁関係にある相続人のことであり、次のうち最上位のグループに属する親族が相続権を得ることになります。

  1. 被相続人の子及びその代襲者
  2. 被相続人の直系尊属
  3. 被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者

参考:法定相続人の範囲

連れ子に相続権はない

被相続人と後妻が結婚しただけでは、被相続人と再婚相手の連れ子との間に血縁関係が発生するわけではありません。たとえ、連れ子が幼少のころから被相続人と同居していたり、被相続人の面倒を見たりしていても、それによって法律上の血縁関係(親子関係)が発生することにはならないのです。

したがって、被相続人の再婚相手の連れ子には、原則として相続権は発生しないということになります。

相談例のケースでも、D氏の連れ子であるEは、このままではAさんの子でないということになり、仮に現在Aさんが亡くなった場合には、その遺産を相続することができません。

養子縁組前

この場合、現在の妻であるDさんが1/2(Dさんは配偶者相続人の資格で相続権を取得します)、残りの1/2をAさんの実子であるCさんが取得することになります。

連れ子に遺産を取得させるには

では、相談者Aさんの希望どおり、その財産を連れ子であるEさんに取得させるにはどのような方法があるでしょうか。

連れ子との間で養子縁組をする

AさんがEさんとの間で養子縁組をすることにより、この二人の間には、養子縁組の日から法定の血縁関係が発生します(民法809条により、養子は養親の嫡出子の身分を取得します)。養子縁組は、戸籍を管轄する市区町村に養子縁組届けを提出することによって行うことができます(養子が15歳未満の場合は法定代理人による代諾養子縁組となります)。

このような法定の血縁関係を創出することによって、EさんはAさんの「相続人(子)」として、Aさんの遺産を相続することができます

養子縁組後

なお、この場合の法定相続分ですが、妻であるDさんが1/2を取得することは養子縁組前と変わりません。Dさんが取得する以外の残り1/2を、Aさんの子であるCさんとEさんが等分で取得することになりますので、CさんとEさんの法定相続分は各1/4の割合となります。誰が具体的にどの財産を取得するかは、遺言による指定がない場合、遺産分割協議によって共同相続人全員で話し合って決めることとなります。

遺言によって連れ子に財産を遺贈

Aさんが遺言を作成し、遺産を再婚相手の連れ子であるEさんに譲る旨の記載をすることで、Aさんが亡くなった場合、Eさんにも財産を取得させることができます。

この場合、法律上の親子関係が発生しないため再婚相手の連れ子が「相続人」となるわけではありませんが、連れ子は被相続人から遺贈を受ける「受遺者」として財産を承継することができます。

なお、Aさんが遺言を作成する場合には、相続開始後に遺言の有効性についての争いが起きる可能性を減らすためにも、あらかじめ相続の専門家である弁護士に相談し、可能な限り公正証書遺言の形式で遺言を作成しておくことをお勧めします。

生前贈与による方法

Aさんが亡くなる前に、Eさんに対し財産を贈与することでも、Eさんに財産を取得させることができます。

この場合も、贈与契約に基づく財産の移転ですので、EさんはAさんの「相続人」となるわけでなく、「受贈者」の立場で財産を譲受することになります。

生前贈与の方法を選択する場合には、AさんとEさんとの間で、贈与契約書を交わし、贈与の対象となる財産について名義変更を行うなどの手続きを行う形となります。また、贈与財産の価額によっては、Eさんにおいて贈与税の申告が必要となる場合もあります。

税務面や遺留分の検討が必要

ここで紹介した養子縁組・遺贈・生前贈与の各方法ですが、同じ財産を承継させる場合であっても、どの方法を選択するかによって税金(相続税・贈与税)の額に違いが出ることがあります。また、遺贈や生前贈与の方法を選択する場合には、他の相続人の遺留分についての配慮も必要です。これらの点については、事前に専門家への相談をしておくことをお勧めします。

まとめ

以上、被相続人の再婚相手の連れ子の相続権について解説しました。

養子縁組も遺言もないままに被相続人が亡くなった場合、被相続人の再婚相手の連れ子は、いくら被相続人の面倒をみていたとしても、相続人や受遺者として遺産を取得することができません。このような事態を避けたいご家族は、まず一度専門家に相談をし、適切な対策を講じておくことが必要でしょう。

弁護士法人ポートでは、こうした連れ子の相続問題についてもご相談・ご依頼をお受けしています。連れ子の相続問題でお困りの方は、ぜひ当事務所の遺産相続無料相談をご利用下さい。

宮嶋太郎
代表パートナ弁護士
東京大学法学部在学中に司法試験合格。最高裁判所司法研修所にて司法修習(第58期)後、2005年弁護士登録。勤務弁護士を経験後、独立して弁護士法人ポートの前身となる法律事務所を設立。遺産相続・事業承継や企業間紛争の分野で数多くの事件を解決。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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