預貯金通帳や取引明細のチェックポイント | 遺産の使い込み
遺産相続トラブルで多くみられる、相続人による遺産預貯金の使い込み問題。こうした問題では、被相続人名義の預貯金口座の取引履歴を取得することが調査の第一歩であることを以下の記事で説明しました。
そこで、今回は、こうした取引履歴(あるいは被相続人名義の預貯金通帳)を取得した場合、それらの記載内容のうちどのような点に注目して使い込みの可能性を判断すればよいかを解説します。
まずは引出額と引出頻度を確認
取引履歴を取得した場合、まずは取引履歴に記載された引出額と引出頻度を確認します。
引出額が少額で頻度も少ない場合
調査の結果、1回あたりの引出額が少額であり、その頻度も多くないような場合は、その引出は被相続人の生活費のためのものであり、それが被相続人の意思に反した引出ではないと判断される可能性が高いでしょう。
個々の被相続人の財産状況にもよりますが、例えば月額10万円程度の金額であれば、裏付けとなる領収書などがなくとも、そうした説明が認められてしまうケースが多いように感じます(他に生活費に充てられていたの収入があった場合は別です。)。
多額の引出しや高頻度の場合
他方で、一度の引出額が多い場合や、一度の引出が多額とまでは言えなくても引出頻度が不自然に多く毎月の引出額の合計額が大きい場合は、被相続人の資力や生活状態にもよりますが、被相続人の生活費のために引き出されたものではないと判断される可能性が高いと言えます。
こうしたケースでは、引出に関与した相続人から合理的な使途の説明や証拠資料の提出がない限り、被相続人の意思に反した引出であると言いやすくなるでしょう。
引出場所についても確認
取引履歴を確認する上では、引出金額や頻度に加えて、引出場所についても確認しておくことが必要です。
引出場所を特定するメリット
預貯金の使い込みに関する不当利得や損害賠償の裁判では、不当な引出をしたと疑われる相続人が、他の相続人からの引出の追及に対して、被相続人本人が預貯金を引き出したと反論をすることが考えられます。このような場合に、例えば、引き出した場所が被相続人の自宅から遠い等の理由から、反論が事実でないと立証できる可能性があるからです。
引出場所の特定方法は?
この引出場所の調査方法ですが、金融機関にもよりますが、一般的には取引履歴に出金店舗の支店番号(店番号や支店コードとも呼ばれます。)が記載されることが多いので、支店番号から支店の所在地を調査して引出場所を特定することができます。
なお、通帳には支店番号の記載が無いものの、取引履歴には支店番号の記載がある場合もありますので、通帳ではなく取引履歴を確認するのがより確実でしょう。
まとめ
以上、遺産の使い込み問題を解決するための預貯金の取引明細のチェックポイントを解説しました。預貯金の使い込みについて不当利得返還請求や損害賠償請求をするにあたっては、その準備段階において、取引履歴の十分な分析が不可欠です。この記事が、預貯金の使い込み問題でお困りのあなたの参考となれば幸いです。
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