遺産分割を弁護士に依頼する際の費用について

本記事では、遺産分割を弁護士に依頼するメリットとは何か、また、その際の費用の種類はどのようなものがあるか、弁護士費用に関する想定外を避けるためのポイントは何かなど、遺産分割に関する業務を弁護士に依頼する際の費用について解説します。

遺産分割手続を弁護士に依頼するメリットとは?

遺産分割は、相続人が遺産を公平に分けるための法的なプロセスです。被相続人の死後、遺産に関する権利は相続人に移転しますが、具体的に誰が何を受け取るのかを決定するためには、遺産分割が必要となります。

特に、遺言がない場合や、遺言があっても遺産分割方法が明確でない場合、各財産の評価や個別財産の取得希望などについて相続人間での意見が分かれる場合などは、遺産分割問題の解決が複雑かつ困難になることがあります。

このような複雑な遺産分割手続きをスムーズに進めるためには、専門的な知識と経験を持つ弁護士によるサポートが有効となることがあります。弁護士は、あなたの代理人として、相続人や遺産の調査や、他の相続人との意見調整、家庭裁判所での調停への出席など、遺産分割を正しく進めるための法的な手続きを幅広くサポートすることができます。

遺産分割手続を弁護士に依頼する具体的なメリットとしては、以下のようなものが考えられます。詳しくは関連記事にまとめていますので、参考にしていただければと思います。

  1. 作業・交渉ストレスの軽減
  2. 依頼者の利益を代弁
  3. 法的観点を踏まえた交渉戦略の立案
  4. 遺産分割後を見越した分割方法のアドバイス

遺産分割を弁護士に依頼する場合の費用の種類

遺産分割を弁護士に依頼することには上記のようなメリットはありますが、やはりそのためには費用(コスト)が発生します。あなたが実際に弁護士に対して遺産分割業務を依頼するにあたっては、その費用についてよく知っておくことが必要です。

まず、弁護士に遺産分割を依頼する際の費用の種類は、以下のようなものがあります。

法律相談料(依頼前)

弁護士に遺産分割に関する代理業務を依頼するという場合、依頼前に弁護士の事務所を訪問するなどし、法律相談を受けることが通常です。このような正式依頼前の法律相談については、有料としている事務所も多く、価格帯としては30分あたり5000円程度が最も多いかと思われます。他方、近年は、気軽に法律相談を利用いただきたい等の理由で相談料を無料としている事務所も少なくありません。当事務所でも、相続問題に関連する法律相談については初回60分まで無料としています。

弁護士報酬

弁護士に仕事を依頼する場合の対価を(広義の)弁護士報酬といいます。 弁護士報酬の算定方法は、それぞれの法律事務所が各自の報酬体系を設定していますが、一般的には、以下のような方式によって算定されることが多いでしょう。

着手金・報酬金方式

依頼の当初または委任契約時に定めた一定のタイミングで、着手金(業務の結果に関係なく発生する報酬)が発生し、さらに、業務完了後に、成功報酬(依頼業務の成果に応じて発生)が発生する方式です。弁護士は依頼業務の成果に応じて、予め依頼者との間で取り決めた報酬料率によって計算した報酬金を、事件終了時に請求します。当事務所でも、遺産分割業務については原則としてこの方式を採用しています。

着手金・報酬金方式は、成功報酬部分が業務の成果に応じて発生するため、報酬負担額の上限が予測しやすいというメリットがあります。

タイムチャージ方式

タイムチャージ方式は、弁護士が遺産分割問題に対処するために費やした時間に基づいて報酬を算定する方式です。弁護士は自分が提供したサービスに対する時間を記録し、その時間に応じて報酬を請求します。これは一般的には単位時間あたりの料金で計算され、そのレートは弁護士や法律事務所によって異なります。

タイムチャージ方式のメリットは、支払う報酬が弁護士が実際に費やした時間に直結しているため、支払いに対する透明性があります。他方、デメリットとしては、事前に弁護士費用を正確に予測するのが難しく、問題が複雑であればあるほど、また、裁判になると更に時間がかかるため、最終的な費用が想定外に高くなる可能性があります。

出廷回数に応じた日当方式

弁護士が裁判所に出廷するたびに報酬を受け取る方式です。裁判の進行により出廷回数が増える場合に適しています。出廷回数に応じた日当が設定される場合、着手金・報酬金方式による報酬と組み合わせて設定されることが多いです。

以下は、要点を表形式でまとめたものです。

方式特徴メリットデメリット
着手金・報酬金方式 着手金と成功報酬の2つの報酬が発生する方式 報酬負担額の上限が予測しやすい。成功報酬部分については結果に応じて発生するため納得感が得やすい 事案解決の経過によっては、弁護士の稼働時間とのバランスを欠くケースもある
タイムチャージ方式 弁護士の費やした時間に基づいて報酬を算定する方式 弁護士の稼働時間に応じた費用負担という点で、支払いに対する透明性がある 弁護士費用の予測の難しさ、依頼業務の結果に関連せず費用が発生
出廷回数に応じた日当方式 弁護士が裁判所に出廷するたびに報酬を受け取る方式(他の方式と組み合わされることが多い) 裁判の進行により出廷回数が増える場合に適している -

経費

弁護士が遺産分割の手続きを行う上で必要となる経費も、通常は依頼者の負担となります。どのような費用が経費として発生するかは、個別事件の遺産や争点の内容に応じて異なりますが、一般的なものとしては、以下のような費用が経費として発生することがあります。

  1. 遺産の調査実費:遺産の全体像を理解するためには、不動産や証券、預貯金などの調査が必要です。これには、不動産の登記簿謄本の取得費用や銀行・証券会社などへの照会費用などが含まれます。
  2. 裁判所への手数料:裁判所への調停や審判の申立てに伴う手数料も経費の一部となります。
  3. 鑑定費用:特定の遺産の価値を正確に把握するためには、専門的な鑑定が必要な場合があります。例えば、不動産や未上場株式、美術品、宝石などの鑑定費用は、遺産分割の経費として発生することがあります。
  4. 交通費・通信費:弁護士が遺産調査や証拠収集のために移動する際の交通費や、遺産関係者との通信にかかる通信費も、経費として考慮する必要があります。

弁護士費用に関する「想定外」を避けるためのポイント

事前によく確認する

弁護士費用の算定方式や、その詳細な内容を事前によく確認しましょう。何か問題が発生した際に驚くことのないよう、依頼前の段階で詳細を把握することが重要です。

着手金・報酬金方式であれば、算定料率や経済的利益の考え方が鍵となります。報酬算定に際し、争いのない遺産については3分の1の経済的利益と評価とする事務所もある一方で、これを料率で調整する事務所も存在します。これらの違いが具体的にどのような影響を及ぼすのか、事前にしっかりと理解しておくことが求められます。

また、タイムチャージ方式の場合、時間単価は当然として、請求対象となる業務の範囲や担当弁護士の人数によって、最終的な費用が大きく変動することもあります。具体的にどのような業務が請求対象となるのか、実際の業務は弁護士何名で対応するのかなど、料金体系の詳細を把握することが必要です。また、特にタイムチャージ方式の場合、時間がかかるほど費用が増えていくため、一定期間あたりの上限を設定してもらうという方法もあります。これにより、予期せぬ費用増加を防ぎ、費用面での安心感を得ることができます。

形式的な費用の高低だけで判断しない

弁護士費用は安いに越したことはありませんが、依頼する弁護士を選定するに際しては、形式的な費用の高低だけで選ぶのではなく、実際の業務の成果によって得られる利益を考慮することが重要です。例えば、高い費用を支払ってでも専門的な知識と経験を持つ弁護士に依頼することで、最終的にはより多くの財産を確保できるかもしれません。

また、弁護士との相性も非常に重要です。専門的な知識やスキルはもちろんのこと、弁護士とのコミュニケーションがスムーズに取れるか、信頼関係を築くことができるかも選び方の重要な要素となります。遺産分割という複雑でデリケートな問題を扱う上で、信頼できる弁護士との良好な関係は、問題解決への道のりをスムーズに進める大きな力となります。

以上のように、弁護士費用に関する「想定外」を避けるため、これらを意識しながら、自身の状況に最適な弁護士選びを行いましょう。

まとめ

本記事では、遺産分割問題の解決において弁護士のサポートを受けることのメリットと、その費用について解説しました。

重要なのは、専門的な知識と経験を持つ弁護士を選び、信頼できる関係を築くことです。また、弁護士の費用については、その算定方法をしっかり理解し、想定外の費用増加を避けることが必要です。形式的な費用の高低だけで判断せず、実際の業務の成果によって得られる利益も考慮しましょう。

遺産分割問題の解決には困難がともないますが、あなたが弁護士のサポートをうまく活用して、スムーズに手続きを進められることを願っています。

宮嶋太郎
代表パートナ弁護士
東京大学法学部在学中に司法試験合格。最高裁判所司法研修所にて司法修習(第58期)後、2005年弁護士登録。勤務弁護士を経験後、独立して弁護士法人ポートの前身となる法律事務所を設立。遺産相続・事業承継や企業間紛争の分野で数多くの事件を解決。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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