相続放棄と生命保険を使って家族を守る方法を弁護士が解説

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相続放棄と生命保険は、家族を守るための有効なツールです。この記事では、相続放棄とは何か、生命保険とは何か、これらを使うことでどのように家族を守ることができるのか、などを弁護士が解説します。

相続放棄の仕組みと効果

相続放棄とは、相続人が家庭裁判所において相続放棄申述手続きを行うことによって、相続人としての地位を放棄することを言います。

参考:相続放棄するべき?収集する情報や判断基準、注意事項について弁護士が解説

相続放棄をした人は、相続開始当初から相続人でなかったものとみなされるため、預貯金や不動産などの相続財産を受け取る権利を失いますが、他方、亡くなった被相続人が負っていた債務の承継も免れることができます。

このため、多額の借金を抱えた被相続人が亡くなった場合、その相続人が相続放棄をすることによって、被相続人の借金を相続人となった家族が返済する必要はなくなります。

生命保険の仕組みと効果

生命保険とは、保険金を被保険者の死亡時に保険会社が支払う契約です。

契約者が保険料を定期的に支払うことで、被保険者が死亡した場合、保険会社から保険金を受け取ることができます。生命保険を使うと、被保険者が死亡した場合に家族の手元に保険金として現金が残るので、被保険者の葬儀費用をはじめ、その後の家族の生活費や教育費などに充てることができ、金銭面での安心を得ることができます。

相続放棄と生命保険を組み合わせるメリット

相続放棄と生命保険を組み合わせることのメリットは、生命保険金の民法上の性質と関係しています。

前述のとおり、相続放棄をした人は、被相続人が相続開始時に所有していた「相続財産」を引き継ぐことができません。しかし、生命保険契約に基づいて保険会社から受取人に支払われる保険金は、一般的に、「相続財産」そのものではなく、保険金受取人の固有の財産として取り扱われます(ただし、税法上は相続財産として取り扱われます。また、受取人指定がない場合などは、例外となる場合もありますので約款等での確認が必要です。)。

このため、被相続人が家族を受取人として加入していた生命保険であれば、例え相続人となった家族が相続放棄を行ったとしても、その家族が受取人として保険会社から生命保険金を受け取ることができるのです。そして、このような場合、相続放棄をした家族が被相続人の債務を引き継ぐことにはならないため、仮に被相続人が死亡時に多額の負債を抱えていたとしても、家族が生命保険金からその支払をする必要はなく、生命保険金はそのまま以後の生活費や教育費等に充てることができることとなります。

  1. 相続放棄:被相続人の抱えてきた借金(債務)を引き継ぐ必要がなくなる
  2. 生命保険:受取人が相続放棄をしても、生命保険金を受け取る権利は失われない

まとめ

このように、相続放棄と生命保険の組み合わせは、多額の債務を抱えた被相続人に万が一のことがあった場合に、残された家族を守る有効なツールとなり得ます。

「相続放棄をしてしまうと、生命保険金も受け取ることができなくなる。だから、相続放棄はせず、受け取った生命保険金から父の借金を返済するしかない。」という誤解をしている方は少なくありません。この記事が、そのような誤解を解消するための手助けとなれば幸いです。

なお、相続放棄を実行するためには、必要な手続きや期限、その他の注意事項があります。確実に相続放棄を行うために、法律の専門家である弁護士へのご依頼をお勧めします。当事務所でも初回無料法律相談を実施していますので、ぜひご利用ください。

宮嶋太郎
代表パートナ弁護士
東京大学法学部在学中に司法試験合格。最高裁判所司法研修所にて司法修習(第58期)後、2005年弁護士登録。勤務弁護士を経験後、独立して弁護士法人ポートの前身となる法律事務所を設立。遺産相続・事業承継や企業間紛争の分野で数多くの事件を解決。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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