遺産分割を放置するデメリット

遺産相続の相談では、「遺産分割は、いつまでに成立させる必要がありますか」とのご質問を多く受けます。しかし、法律上の義務として、相続人が遺産分割を必ず行わなくてはならない期限はありません。言いかえれば、遺産分割はいつまでも放置しておくことが許されるということになります。

ところが、遺産分割を長期間にわたり未了のまま放置しておくと、実際上は少なからず問題が発生することがあります。そこで、以下では、遺産分割をしないことのデメリットについて弁護士が解説します。

遺産分割の放置

なぜ遺産分割を放置してしまうのか

人はなぜ遺産分割を放置してしまうのでしょうか。遺産分割を放置するデメリットをみる前に、よくある遺産分割未了の理由を挙げてみます。

  1. 誰も遺産分割の話を言い出さない
  2. 協議したが意見がまとまらず放置
  3. 遺産の存在に気づいていない
  4. 他の相続人と連絡が取れない・取りたくない
  5. 未成年者の相続人と親権者が利益相反
  6. 認知症の相続人がいる

このように、遺産分割が放置されてしまう理由には様々なものがあるということができます。

遺産分割放置のデメリット

では、遺産分割が放置されてしまうと、どのようなデメリットが発生するでしょうか。

不動産の処分や有効活用に支障が

遺産の中に土地や建物といった不動産が含まれている場合、遺産分割をしないとその処分や有効活用が困難になってしまうというデメリットがあります。

すなわち、遺産分割をしないと相続不動産は相続人の遺産共有状態のままとなります。このため、相続人が相続不動産の全体を単独で売却することはできません。もちろん、相続人は、持分だけであれば単独で売却することができますが、持分のみの売却は流通性が低く、買い手がつかないか、買い手がいても低額での売却を余儀なくされる傾向にあります。

また、共有状態のままでは、他の相続人の同意がないと、相続不動産の建て替えはもちろん、これを長期の賃貸に出すこともできません(民法251条にいう変更行為にあたる場合)。

数次相続でさらに複雑に

次に、遺産分割をしない間に数次相続が発生することによって相続人の数が増え、遺産分割が困難になるというリスクも発生します。数次相続とは、遺産分割協議を行わないうちに相続人が死亡し、次の相続が発生してしまうことを言います。

数次相続が発生することにより、相続人の数が増えてしまいます。例えば、相続人が6人いる被相続人が死亡し、被相続人の遺産について遺産分割を行わないままでいたケースを考えてみます。その後相続人が全員死亡し、それらの相続人がそれぞれ3名いたという事例の場合、被相続人の相続人の数は3×6=18人にも及びます。

この場合、被相続人の遺産について相続持分を有する18名の相続人で遺産分割を行う必要があるのですが、多数人による遺産分割であることから、遺産分割がさらに難航する可能性が高いです。弁護士に依頼するにしても、費用が高額になりがちです。

税務面の問題

遺産分割協議をしない場合、税務面でのデメリットもいくつか生じます。例えば、小規模宅地等の特例や配偶者の相続税税額控除の問題があります。前者は、被相続人の自宅などに供されていた宅地等について、一定の条件のもとに相続税課税価格を減ずるという制度であり、後者は、配偶者について一定範囲で相続税の減免を可能とする制度です。

相続税の基礎控除額が減少したことなどもあり、利用頻度の増加している制度ですが、その適用を受けるためには、原則として、相続税の申告期限内に遺産分割が成立していることが必要となります(なお、期限後3年以内の分割見込書を提出することで、例外的に、申告期限後に同制度の適用を受けられる場合はあります。しかしそれでも期限後3年が経過してしまうと、調停中や審判中などのやむを得ない事情がない限り、こうした例外措置も難しくなります。)。

また、物納制度や、非上場株式の相続がある場合における同株式に関する相続税の納税猶予の制度の利用については、申告期限内の遺産分割が必要です。

放置された遺産分割をまとめるには

以上に説明したとおり、遺産分割を未了のまま放置しておくことについては少なからずデメリットがあります。この意味で、相続人としては、遺産分割をなるべく早期に成立させておくことが有益といえるでしょう。

もちろん、遺産分割が進まないケースでは、前記のように様々な原因・理由があることも確かです。しかし、弁護士に相談し、法的な手続きを活用することによって、そうした遺産分割を遅延させる原因を除去できることは少なくありません。意見が対立している場合であれば遺産分割調停や審判を利用することができますし、他の相続人との連絡に問題があれば弁護士が相続人の所在調査や連絡交渉の代行をすることもできます。また、特別代理人の選任や成年後見制度を利用することで、未成年相続人の利益相反や認知症の相続人の問題を解決することも可能です。

弁護士法人ポート法律事務所では、こうした困難な遺産分割事件についてもご相談・ご依頼をお受けしております。本記事をお読みになり、遺産分割についてご相談やご質問がおありの方は、お気軽に当法人の無料法律相談をご利用ください。

(弁護士 吉口直希・宮嶋太郎)

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