収益不動産の円滑な承継・相続をするための基礎知識

1. はじめに

近年、相続税対策として収益不動産(貸ビル、貸マンション等)を活用する事例が増加傾向にあります。しかし、収益不動産の相続には、預貯金などの金融資産とは異なる特有の問題があります。不動産には個性があり、立地条件や収益性、築年数などが物件ごとに異なります。また、不動産購入時の借入金や、入居者に対する敷金返還義務などの債務が付随していることもあります。そのため、どの相続人がどの物件を引き継ぐのかをめぐって、意見が対立するトラブルが頻発しているのです。

本記事では、こうしたトラブルを回避し、円滑な相続を実現するために、被相続人と相続人がまず身につけておくべき収益不動産の生前承継・相続に関する基本的な知識を弁護士が解説します。

2. 収益不動産の承継時期(どのタイミングで承継するか)

収益不動産の承継時期は、大きく分けて3つのパターンがあります。

(1) 生前対策による事前承継

被相続人が生前に収益不動産を相続人に贈与する方法です。最も被相続人の意思を反映させやすく、また、相続人の承諾のもとに贈与がなされるため、受贈者の意思に反する承継を避けることができます。ただし、贈与税が発生する可能性が高いため、税務面での検討は不可欠です。また、将来の収益変動リスクを考慮する必要もあります。

(2) 遺言による承継

被相続人が遺言で収益不動産の取得者を指定する方法です。収益性の分配に被相続人の意思を反映できるメリットがあります。相続開始と同時に承継が行われ、単独での登記も可能になるため、遺産分割は不要です。ただし、事前に収益不動産の取得者の了解を得ておかないと、結果的に早期売却をせざるを得ないというケースもあります。また、収益不動産をの価格変動による遺留分侵害額請求のリスクがあるほか、遺言書の不備により無効になるケースもあります。

(3) 遺産分割による承継

相続人全員の合意に基づいて収益不動産を分割する方法です。話し合いにより、各相続人の事情に応じた柔軟な分割が可能です。ただし、相続人間の合意形成が難しい場合は、調停や審判が必要になることもあります。

3. 収益不動産をどう分けるか

収益不動産の分割方法は、物件の特性や相続人のニーズに応じて選択する必要があります。ここでは、相続人がどのような形態で収益不動産を保有するかという観点からいくつかのパターンを紹介します。

単独の取得者を定める

個別の収益不動産につき、単独の相続人が所有権を持つ方法です。1棟もののマンションを各フロア、あるいは各貸室ごとの区分所有建物とし、それぞれについて単独の取得者を定める形態を取ることもあります。各相続人が自由に不動産を活用できるメリットがある一方、物理的にこうした分割が難しいケースもあります。また、分割後の収益性が低下する可能性や、区分所有の場合の管理トラブルにも注意が必要です。

換価して分割

収益不動産を売却し、その売却益を相続人間で配分する方法です。現金化することで分割が容易になります。ただし、売却時期や市場環境によって売却益が変動するリスクがあります。また、売却時に譲渡所得税などの税金が発生する点にも注意が必要です。

共有して分割

収益不動産の所有権を相続人で共有する方法です。不動産を継続して保有・運用できるメリットがあります。ただし、共有物の管理や修繕・処分などの意思決定において、相続人間の調整が必要になります。

資産管理の株式を分割

変則型として、収益不動産の所有権を資産管理会社に移し、管理会社の株式を相続人が取得(あるいは売却)する方法もあります。この方法では、不動産を継続して保有・運用できるメリットがあります。ただし、複数の相続人が株式を保有する場合、資産管理会社の経営に関して相続人間の調整が必要になります。

4. 収益不動産の評価手法

収益不動産を公平に分割するためには、適切な不動産の評価が欠かせません。以下では、被相続人が遺産の分配を検討し、あるいは相続人が遺産分割の場で遺産となる不動産を評価する際に一般に用いられる主な評価手法(どんな資料・数値に依拠して評価するか)を紹介します。

(1) 査定価格による評価

不動産業者による査定価格を参考にする方法です。手続きが簡便で、複数の業者の意見を参考にできるメリットがあります。ただし、査定価格は業者によってばらつきがあり、客観性に欠ける可能性があります。

(2) 不動産鑑定士による評価

収益還元法など、不動産鑑定士による客観的な評価方法です。公正な評価が得られやすく、相続人間の合意形成に役立ちます。ただし、評価費用が発生し、手続きに時間がかかります。

(3) 相続税評価額の活用

税務上の評価額を基準とする方法です。相続税の計算が明確になり、税務署との交渉がスムーズに進むメリットがあります。ただし、相続税評価額は実勢価格よりも低い傾向があり、分割の公平性に影響する可能性があります。

5. まとめ‐収益不動産の分割トラブルを防ぐために

収益不動産の分割トラブルを防ぐためには、以下の点がポイントです。

事前の相続対策

被相続人が生前に相続人と協議し、適切な相続対策を講じておくことが重要です。遺言書の作成や、生前贈与などの対策を検討しましょう。特に、収益不動産の分割方法や評価方法について、被相続人の意思を明確に示しておくことで、相続人間の争いを未然に防ぐことができます。また、収益不動産に関連する債務や契約関係についても、整理しておくことが望ましいでしょう。

相続人間のコミュニケーション

遺産分割による分配決定が必要な場合、相続人同士が早い段階から話し合いを行い、合意形成に努めることが大切です。各自の希望や事情を共有し、譲り合いの精神を持って臨むことが求められます。収益不動産の分割方法や評価方法について、相続人全員が納得できる解決策を見出すためには、十分な話し合いが不可欠です。必要に応じて、中立的な立場の第三者を交えることも検討しましょう。

専門家への相談

弁護士や税理士など、専門的な知見を持つ専門家に相談することをおすすめします。法律面や税務面での適切なアドバイスを受けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。特に、収益不動産の評価方法や税務処理については、専門家の助言が欠かせません。また、相続人間の調整が難しい場合には、弁護士に調停等を依頼することも有効な手段となるでしょう。

収益不動産の相続に関するお悩みやご相談がある方は、ぜひ弁護士法人ポートにご相談ください。当法人では、経験豊富な弁護士が、お客様のご事情に合わせた最適な解決方法をご提案いたします。事前の相続対策から、遺産分割、紛争解決まで、幅広く対応可能です。お気軽にお問い合わせください。

宮嶋太郎
代表パートナ弁護士
東京大学法学部在学中に司法試験合格。最高裁判所司法研修所にて司法修習(第58期)後、2005年弁護士登録。勤務弁護士を経験後、独立して弁護士法人ポートの前身となる法律事務所を設立。遺産相続・事業承継や企業間紛争の分野で数多くの事件を解決。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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