預貯金の使いこみ(無断引き出し)トラブルの基本

被相続人が亡くなった後その預貯金口座を調べてみると、預貯金残高が思ったよりも少なかったというご相談を受けることがよくあります。もちろん、こうした事例でも、預貯金の使い道について被相続人が了解をしていた限り、法的な返還請求権の問題は発生しません。しかし、中には、相続人のうちの一人が、被相続人に無断でその預貯金を出金し、被相続人とは無関係な用途に費消してしまうことがあり、こうしたケースでは、当該相続人に対し使い込みに関する金銭請求が可能となります。以下では、このような預貯金の使い込み(無断引出し)トラブルの基本的事項について、弁護士が解説します。

預貯金の使い込み問題とは何か

一部の相続人が、被相続人名義の預貯金口座から無断で金銭を引き出し、不正な使い込みを行うと、その発覚後、当該使い込み行為について、他の相続人からの責任追及を受け、トラブルとなる場合があります。

そして、このようなトラブルは、一般に、預貯金の使い込み問題(無断引出問題、不正引き出し問題、使途不明金問題)などと呼ばれ、遺産相続に関わるトラブルの中でも、比較的頻度の高い類型であるということができます。多くの事案では、被相続人と同居するなどして、被相続人の財産を事実上管理していた相続人が被告(請求を受ける側)、その他の相続人が原告(請求をする側)となります。

遺産預貯金の使い込み基本

なお、預貯金の使い込み問題は、使い込み行為の時期が、被相続人の生前であるか、死亡後(相続開始後)であるかによって、請求の根拠となる法律構成や利用すべき法的手続きが異なる場合があります。以下では、特に断りのない限り、被相続人が死亡する前の使い込み行為に関するトラブルについて解説します。

参考:使い込み行為の時期の違いと請求内容の違いについて

相続人は何が請求できるのか

一部の相続人が被相続人名義の預貯金を使い込んでいた場合、その他の相続人は、使い込みをした者に対しどのような請求をすることができるでしょうか。

この点については、通常、次の2つの法的根拠による金銭的な請求を行うことが可能とされています。

  1. 不当利得返還請求・・・法律上の原因なく、他人の財産によって利益を得、そのために他人に損失を及ぼした者に対し、その利得を返還するよう請求できる権利(民法703条)
  2. 不法行為に基づく損害賠償請求・・・故意又は過失により、他人の権利・利益を侵害した者に対し、これにより生じた損害の賠償を求める権利(民法709条)

ただし、責任追及を行う相続人は、使い込みのあった金額の全てを請求することができるわけではありません。被相続人に帰属する上記の各権利のうち、自己の相続分に相応する部分についてのみ権利行使ができるものとされています(例えば、1000万円の使い込みがあり、責任追及をする相続人の法定相続分が2分の1である場合には、500万円分の請求権の行使が可能となります。)

使い込みを立証するための証拠とは

預貯金の使い込みについて責任追及を行おうとする相続人は、使い込みが行われたことを立証するための証拠資料を集めることが必要となります。では、何をどのようにして集めるとよいでしょうか。

まず、遺産の使い込み問題で最重要といえる証拠資料として、使い込みの時期や金額を特定するための、被相続人名義の預貯金口座の取引履歴・取引経過があります。これらは、通常、相続人が銀行や信用金庫などの金融機関に開示を求めることによって取得することができます。

参考:預貯金通帳や取引明細のチェックポイント

また、被相続人の生活状況や健康状態を立証するという点では、医師のカルテや看護記録、介護等級の認定資料なども重要な証拠となります。これらは、関係する病院や、介護等級認定を取り扱う自治体の担当部署に申請して開示を受けることになります。

参考:使い込み問題解決のために重要な証拠資料とその収集

使い込み問題解決のための法的手続きは

預貯金の使い込み問題を解決するための法的手続きとしては、主に次の2種類の手続きがあります。

  1. 遺産分割調停手続きを利用する方法
  2. 民事訴訟を利用する方法

これらのうち、原則的な方法は、後者の民事訴訟による裁判手続きを利用する解決方法です。民事訴訟では、当事者が自らの主張を戦わせ、これらを証拠によって立証・反証していくことになります。

参考:使い込み訴訟の流れと主な反論パターン | 裁判で無断引出を認定するときの考慮要素

しかし、遺産分割の当事者が遺産分割調停手続きでの解決を図ることに同意し、使い込み問題の解決内容についても一定の合意が形成可能な場合には、実務上、これを遺産分割調停手続きに取り込んで一回的解決を図ることも行われています。

参考:預貯金の使い込み問題を解決するための法的手続き

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